事業再生と鑑定評価1(概要)
2022年1月15日
事業再生とは、簡単に言うと、つぶれかかった企業を立ち直らせることです。 つぶれる、といのは、倒産や破綻することです。
「事業再生」高木新二郎著(岩波新書)の冒頭には次のように記載されています。 「事業を再生するためには、なによりも早期に対策を立てて実行に移すことが必要になる。事業再生を医療に例えるなら外科手術に似ている。病気が全身に拡がらないうちに患部を切除し、体力を回復させて活力を甦らせるように、不採算部門や不得意な部門を切り出して他に売却するか閉鎖する。その後、手術の結果を馴染ませ、体質を改善するための内科的治療を継続して健康体へと回復させるように、収益を改善できる見込みのあるコア部門に力を集中し、過剰債務(多すぎる借金)を減らすのはもとより、再投資を呼び込むなどによって体力の強化を図る。事業と財務の二つの側面での再構築(リストラクチャリング)を行うのだ。いうまでもなく事業再生の場合にも、早期治療のためには早期発見が必要である。」
いきなり否定するわけではありませんが、事業再生ってそんなに簡単に言い切れるものなのでしょうか? 現実的に中小企業においては、不採算部門の閉鎖や売却というのはなかなか難しい面もあるので個人的にはあまり賛成はできません。たとえ零細企業であろうと、企業はそれぞれ独自の企業文化と歴史を持っているので、ヘタな外科手術は企業の存続が危ぶまれる結果にもなりかねません。外科手術は最小限度にとどめ、あとは漢方的処方やリハビリをしながら自律的に回復していくことがよいのではないかと、個人的には考えます。ただし、時間的に許されればの話ですが…
ですので、事業再生は、企業または事業を立ち直らせる、というよりも、自分で立ち直ってもらうようサポートすることではないかなと思います。
では、なぜそこまで悪化してしまうのでしょうか。 理由はいろいろあるでしょう。 放漫経営、過当競争、需要の減退、過剰債務、連鎖倒産など。
いずれにしても、借金返済が滞っているということです。 それでもつぶれないのは、本業(あるいはどこかの事業)である程度のキャッシュフローを生んでいるからです。キャッシュフローを生んでいれば、一定期間借金負担を軽くし、その間にキャッシュフローを安定化させ健康体に回復することができるわけです。
事業再生にあたっての金融支援としては、債権放棄やDDS(デット・デット・スワップ)DES(デット・エクイティ・スワップ)等があります。財務デューデリジェンスにおいて実態バランスシート(BS)を作成し、担保保全額をみながら債権放棄等の額を決めます。対象企業が資産として不動産を多く所有している場合、時価に対し簿価が膨らんでいる場合が多いので、不動産を時価評価し直し、実態的な価値を反映したBSを作成するのです。 債権者(主に金融機関)は、特に債権放棄を伴う場合は自行の業績に関連してきます。また、スポンサーがいる場合は出資額にも影響を及ぼすので、時価評価が必要な、事業再生において不動産鑑定は重要な鍵を握っています。