価格水準の調査

 現地調査の前には、ある程度担保不動産とその属する地域や周辺地域の価格水準を調べておくことが必要です。そうすることにより、住宅街においては町名や街区による価格水準の違いを、商業地においては表通りと裏通りでの価格水準の違いを知ることができますし、現地調査時に不動産業者にヒアリングをする場合にも、ある程度価格水準を把握していれば、より具体的な情報を聞くことができるかもしれません。 価格水準を調べるには、公表されていて入手が簡単な地価公示や相続税路線価などを使うのが最もよいでしょう。

公表されている不動産の価格

公表されている不動産の価格で代表的なものには、主につぎの4つがあります。 (1)地価公示 (2)地価調査 (3)相続税路線価 (4)固定資産税評価額

(1)地価公示

地価公示法に基づき、国土交通省土地鑑定委員会が、適正な地価の形成に寄与するために、毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を3月に公示しているもので〈(後述の地価調査と合わせて一般的に「公示価格」といわれる)、社会・経済活動についての制度インフラとなっています。平成31年地価公示では、26,000地点で実施されています。地価公示の特徴は、原則として都市計画区域内のみに標準地が設定されていることです。 主な役割として、つぎのようなものが掲げられます(注)。

・一般の土地の取引に対して指標を与えること

・不動産鑑定の規準となること

・公共事業用地の取得価格算定の規準となること

・土地の相続評価および固定資産税評価についての基準となること

・国土利用計画法による土地の価格審査の規準となること

(注)国土交通省ホームページ地総合ライブラリーより抜粋

(2)地価調査

国土利用計画法施行令9条に基づき、都道府県知事が毎年7月1日における標準価格を判定し、9月中旬頃に発表しているものです。平成30年地価調査では、21,578地点で実施されました。土地取引規制に際しての価格審査や地方公共団体等による買収価格の算定の規準となることにより、適正な地価の形成を図ることを目的としています。 地価公示と異なり、都市計画区域外でも実施されており、地価公示と補完関係にあるといえます。 (1)地価公示、(2)地価調査ともに国土交通省のホームページ(土地総合情報ライブラリー)で見ることができます。 また、地価公示価格決定の根拠となる鑑定評価書も閲覧・ダウンロードできますので、周辺の状況や不動産市況の動向などをより詳しく知りたい場合に大変便利です。 「標準地番号」の欄においては、用途別に数字を付し、つぎのように表示しています。 ・住宅地:1、2、3…… ・商業地:5-1、5-2、5-3…… ・工業地:9-1、9-2、9-3……

(3)相続税路線価

正式には「財産評価基準書『路線価図・評価倍率表』」といい、本来は相続、遺贈または贈与により取得した財産に係る相続税および贈与税の財産を評価する場合に用いられるものです。しかし、全国の都市部ほぼすべての道路に付設されており、価格水準を調べるのに大変便利なことから、公表されている資料のなかでは最も活用される不動産価格といえるでしょう。我々不動産鑑定士の評価実務においても、土地の価格を検討するときに、路線価に対して評価額がどの程度の水準なのか、という一種の物差し代わりに活用しています。 バブル崩壊後、不良債権処理全盛期の頃やリーマンショック後は「相続税路線価の8掛け(8割)」など、路線価を下回る水準で土地が取引された時代もありましたが、現在は不動産が活況を呈していることから、東京都心の一等地では路線価の数倍で取引されるというようなこともあります。 相続税路線価の概要はつぎのとおりです。

・価格時点:毎年1月1日

・発表時期:毎年7月上旬

・発表主体:国税庁、国税局長

・特徴:公示価格(地価公示、地価調査)の水準の8割程度

(4)固定資産税評価額(標準宅地・路線価)

固定資産税課税のための評価額です。 個別の不動産については、固定資産税課税明細に固定資産税評価額が記載され、それは基本的に所有者しか見ることができません。しかし、その個別の不動産の固定資産税評価額を決めるに際して用いた固定資産税標準宅地の価格や固定資産税路線価は、役所の資産税課で閲覧が可能です。また、「全国地価マップ」でも見ることができます。 前述の相続税路線価は、付設されていない地域(倍率地域という)もありますので、倍率地域の場合は、固定資産税標準宅地の価格等を参考に、価格水準を把握するとよいでしょう。 固定資産税評価額の概要はつぎのとおりです。

・価格時点:毎年1月1日

・発表時期:3年に1度評価替

・発表主体:総務省、市町村長

・特徴:公示価格の水準の7割程度

このように、公示価格に対して、相続税路線価は8割、固定資産税評価は7割の水準となっています。したがって、相続税路線価であれば、その価格を80%で割り戻すことにより、地価公示水準の価格を知ることができます。 例えば、路線価が8万円のところでは、 8万円÷0.8=10万円 となり、10万円が公示価格の水準ということになります。 地価公示や地価調査は、どうしても地点数が限られますので、このような方法を使えば、地価公示等がない場所でも公示価格の水準を把握することができます。 現実の土地価格は、様々な条件が重なることで高くなったり安くなったりするため、一律に収まるものではありませんが、このような価格水準を掴むことにより、担保不動産やその属する地域の価格動向か今どういう状況にあるのかを知ることができるわけです。