所有者から入手する資料による調査

法務局調査や役所調査のほかに、所有者から入手する資料による調査があります。 それらの例としては、つぎのようなものがあります。

・オフィス、マンション等の賃貸物件の場合:賃貸借契約一覧表(レントロール)、建物賃貸借契約書

※レントロールはエクセル等の表計算ソフトで作成されていることが多く、電子ファイルで提供される場合もあります。それゆえ、改ざんが比較的容易であり、注意が必要な資料といえます。可能であれば、賃貸借契約書との照合、少なくとも対象不動産周辺の相場賃料との比較は必要でしょう。

・借地、底地の場合:土地賃貸借契約書、事業用定期借地権設定契約書

・土地区画整理地内の場合:仮換地証明書、仮換地指定図写し

・課税関係資料:固定資産税・都市計画税明細、評価証明

・その他:建築確認申請書写し、売買契約書、重要事項説明書

役所調査

役所調査については、市役所、町役場等の窓口に赴き、都市計画法や建築基準法等の公法規制や上下水道、埋蔵文化財などについての調査を行います。 役所調査での注意点は、当たり前のことですが、事前に調べた調査内容を必ず確認するということです。また、役所調査時に、事前調査では判明しなかった法規制等について影響が及ぶことが判明した場合は、その内容が記載されている資料の提示をお願いし、確認することが必要です。 役所では担当者の異動も多く、まったく異なる部署から異動してきたばかりの職員が担当となっている場合などは、法規制の内容についてまだ把握しきれていないこともあるので、お互いの勘違いや間違いを防ぐため、必ず確認することが必要です。 役所での主な調査部署(代表的なもの)には、主につぎのものがあります。

①都市計画課

役所の「都市計画課」や「まちづくり課」といった部署で都市計画法を調査します。また、インターネットで対象市町村の都市計画図が閲覧できたり、担当部署の窓口でも自由に閲覧できたりします。 都市計画図では、用途地域、容積率、建ぺい率、都市計画道路、高度規制等を調査確認しますが、担当部署で現在の内容に間違いないか、他に規制はないか、法規制が変更される予定はないか、などを確認します。

②道路管理課

道路管理課では、市町村道としての認定の有無、認定幅員、私道かどうかの確認などを行います。なお、国道の場合は国道工事事務所、都道府県道の場合は都道府県の出先機関でないと認定幅員等はわかりません。 これら出先機関は市役所などと離れた場所にあることが多いため、事前にどこにあるか調べておき、調査行程の段取りをしておくとよいでしょう。

③建築指導課

建築指導課では、建築基準法上の道路か否か、どの種別の道路に該当するか等を確認します。道路の種別としては、建築基準法42条1項1号、2項道路などがあります。 建築基準法上の道路に接しているか否かは建物の建築について大きな影響を及ぼしますので、役所調査のなかでも特に重要な調査といえます。

④その他

対象物件により、その他、つぎのような調査部署と内容が考えられます。

・開発指導課:開発指導要綱の内容調査や開発登録簿の閲覧

・教育委員会:埋蔵文化財包蔵地の該当の有無、試掘調査の要件等の調査

・環境保全課:土壌汚染対策法関連の調査

・資産税課:固定資産税路線価の閲覧や地番図の閲覧

・水道局:上水道、下水道埋設管の調査 ・ガス会社:都市ガスかプロパンガスかなどの調査

必要資料の収集(事前調査)

 不動産の調査にあたっては、現地に行く前に、対象不動産について、事前に入手可能な資料を用いて様々な角度から調査します。事前調査により対象不動産のイメージを掴むとともに、現地調査をスムーズに行うことができます。 また、現地に行ったときの実際の感覚と、事前にもっていたイメージとの違い、すなわち、現地でなければ感じ取れない情報がよりはっきりと認識できるようになります。 事前調査には、主につぎのものがあります。 (1)法務局調査 (2)役所調査 (3)所有者から入手する資料による調査

(1)法務局調査

法務局調査では、権利関係等の調査を行います。現在はインターネットで全部事項証明書や公図等を取得できるので、それで済む場合もありますが、実際に法務局に赴き、公図等を確認しながら調査する場合もあります。 法務局調査で収集する資料には、主につぎのものがあります。 ①不動産登記情報(全部事項証明書) ②地図情報(地図、または地図に準ずる図面) ③図面情報(土地所在図・地積測量図、建物図面/各階平面図、地役権図面) これらの資料はインターネットで取得が可能で、PDFにて閲覧・ダウンロードすることができます。ダウンロードした全部事項証明書は「ネット謄本」とも呼ばれており、費用も安く済みます。

①不動産登記情報(全部事項証明)

不動産登記情報(全部事項証明書)について、土地の表題部では「所在」「地番」「地目」「地積」を、建物の表題部では「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」「建築年月日」「付属建物」を確認することができます。 ここで、全部事項証明書に記載されている住所の表記は「住居表示」ではなく「地番」で表記されています。インターネット上の地図や市販の地図などは、一般的に「住居表示」で表記されていますので、「地番」と異なることに注意してください。住居表示未実施区域でも、地図上の「地番」と登記上の「地番」の位置が異なっていることがあるため、対象不動産の物理的位置の特定は慎重に行いましょう。 権利部(甲区)では、所有者を確認します。現在の所有者だけでなく、過去からの所有者の経緯(権利移転の状況)も確認できます。 権利部(乙区)では、抵当権、根抵当権、賃借権等の所有権以外の権利を確認することができます。 また、共同抵当権が設定されている場合、個々の目的不動産の登記に、これと共同抵当関係に立つ他の不動産が存在する旨が記職されるとともに、共同担保目録(以下、「共担」という)が作成されます。共担は、対象不動産の確定や担保徴求漏れをチェックするときにも使います。

②地図情報(地図、または地図に準ずる図面)

不動産登記法14条の図面(以下、「法14条地図」)では、対象地の位置、形状等が確認できます。公図は「地図に準ずる図面」として扱われており、法14条地図と比べて正確性に劣るため、概ねの確認ということになります。 法14条地図は、地籍調査の結果が反映されているので正確ですが、公図は地域によっては「公図錯綜地区」といい、現況とまったく異なる状況が記載されている場合もあります。

③図面情報(地積測量図、建物図面/各階平面図等)

地積測量図は、対象地の実測図であり、形状や面積の確認ができます。ただし、すべての地番に地積測量図があるわけではありません。また、稀に登記面積と異なっていることがあるので、地積測量図がある場合は、必ず登記面積との照合を行いましよう。 建物図面/各階平面図は、土地上の建物の配置、建物全体の形状、各階の形状が確認でき、未登記の増改築や未登記建物の確認にも使います。事前に入手した建物図面で対象建物の形状をしっかりと掴み、現地調査に臨みましよう。