江戸の不動産(長屋のつくりと家賃)

江戸時代の長屋のサイズは、間口九尺(一間半/約2.7m)×奥行き二間(約3.6m)、面積は約三坪、通称「九尺二間の裏長屋」といわれ、四畳半ひと間に土間と台所が標準仕様だったようです。路地の幅員は三~四尺(約1m)、障子が開いていればお向かいさんの家の中は丸見えだったでしょう。江戸町人のうちの約70%が賃貸住まいであり、そのほとんどが長屋に居住していたといわれています。ざっくり計算すると、幕末の町人人口約60万人として、42万人が長屋住まいだったということです。テレビの時代劇では、おかみさん達が長屋で井戸端会議をしているシーンが流れることがありますが、あれが町人の住む典型的な裏長屋なのではないでしょうか。

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江戸時代は火事が多く、かつ、消防システムが整備されていなかったため、燃えてもすぐに建て替えができるようにと考えたのか、長屋のつくりは粗末であり、建主は4~5年で元を取ろうと考えていたようです。すなわち、投資回収期間が4~5年ですので、投資利回り20~25%といったところでしょうか。そして、つくりが粗末な割には家賃は高かったようです。

そこで、長屋の家賃について調べてみました。幕末の万延の頃(1860年~1861年・桜田門外の変の頃)、下谷の九尺二間(三坪・約10㎡)の裏長屋の家賃が500文~600文という記録が残っているようです。現在の貨幣価値に置き換えるのは非常に難しいですが、日銀の資料に基づき、当時の大工の賃金で換算すると、1両≒35万円程度となりました。1両=6,500文として円に換算すると、27,000円~32,000円となり、一坪あたり約10,000円ということになります。昭和50年代後半、私が東京に下宿していたころで、四畳半ひと間の木造アパート(風呂なし・トイレ共同)の家賃が15,000円くらいだったと思うので、それと比較すると、確かにちょっと高いような気がしますね。

さて、一応概ねの家賃が出ましたので、裏長屋開発のシュミレーションをしてみたいと思います。

  • 計画建物:木造平家建て、延べ面積53坪
  • 総賃貸面積:53坪
  • 年間収入:6,360千円(53坪×10千円×12ヶ月・満室想定)
  • 土地仕入価格:0円(地主が建築するケースを想定)
  • 建築コスト:500千円/坪
  • 総投資額:26,500千円(53坪×500千円)

以上より、満室稼動の場合の投資回収期間は4.17年(26,500千円÷6,360千円)となります。貨幣価値換算の正確性には疑義が残りますが、まあそれはそれとして、このシュミレーションだと4~5年で投資回収は図れることになりますね。

江戸時代は身分の違いによる格差社会であり、一般庶民(江戸では町人)が土地を買うことはかなり困難だったと思われ、このような投資は、土地を所有する一部の層のみにしかできなかったのでしょう。

【参考資料】

落語ことば辞典(岩波書店)
落語ハンドブック(三省堂)
落語手帳(東京書籍)