法定地上権

Aが土地とその土地上の建物を所有していて、土地だけに抵当権が設定された後、競売によりBがその土地の所有者になったとすると、Bの土地上にAの建物があるという状態になります。このような場合に、AはBの土地上に何の権利ももっていない状態となってしまいます。そこで、競売によってこのような状態が生じた場合には、その建物について、その土地に地上権が設定されているものとみなすこととし、競売によって生じるトラブルを避けるようにしています。こうして認められる地上権を「法定地上権」といいます(民法388条)。これは、建物の存続と建物の利用権の保護という社会的要請であり、法定地上権は、土地の利用権と抵当権とを調整する機能を有しています。 このケースでいえば、土地を取得したBは、地上権が設定されている土地を購入したことになります。

民法388条

土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。

法定地上権の成立要件は、つぎのとおりです。

  • ①抵当権設定当時、土地の上に建物が存在していること
  • ②抵当権設定当時、同一人が土地・建物を所有していること
  • ③土地・建物の一方、または双方に抵当権が設定されていること
  • ④競売の結果、別々の所有者に属することになったこと

法定地上権の成立要件のうち、①~③までの要件がすでに備わっている場合、これは「法定地上権が潜在化している状態」であり、これに④の要件が加わると法定地上権が顕在化することになります。 法定地上権は、土地・建物の双方に抵当権が設定されている場合、すなわち共同抵当権の場合でも要件を満たせば成立しますし、未登記建物であっても成立します。 このような法定地上権の問題が生じる可能性がありますので、担保に取ろうとしている土地上に建物がある場合は、土地・建物双方に抵当権を設定する、可能であれば同順位の抵当権を設定する、ということが債権保全上重要なことなのです。

※建物が未登記建物の場合 法定地上権は建物が登記されていることを要件としないため、未登記建物であっても法定地上権は成立します。未登記建物がある場合は、固定資産税の課税明細書に建物の建築年月日が記載されています。所有者から課税明細書の提示を受けて、確認するようにしましょう。

事業再生と鑑定評価4(ケース・スタディ)

最後に、事業再生においてDDSがどのように実施されるのか、事例を基に説明します。 分かりやすくするために、数字、項目などは簡略化、省略してあることをご了承ください。

北関東の某温泉にある神山旅館は、バブル期の過大投資とその後の景気低迷、団体旅行からグループ旅行へという旅行スタイルの変化も影響し、借入金の金利負担にあえいでいます。しかし、本業ではある程度のキャッシュフローを生んでいること、経営陣が本気で再生に取り組もうとしていること、外国人旅行客の増加から売上が上向きつつあることなどから、地元金融機関が中心となり、コンサルティング会社の調整の下、再生計画を策定することになりました。

(1)実態バランスシートの作成(表4)

取引先金融機関、不動産鑑定士、公認会計士等が参加したアドバイザー会議を経て、不動産鑑定評価を含む財務DDが実施され、バランスシートの資産の部は表4のように変化しました。 鑑定評価による土地建物の評価額は1,300,000千円(土地:300,000千円、建物1,000,000千円)となり、バランスシート上の建物価格は2,500,000千円から1,000,000千円へと、土地価格は1,000,000千円から300,000へと、大きく修正されました。従来の土地建物の簿価が3,500,000千円ですから、-2,200,000千円の修正です。 資産の部の合計が、4,173,000千円から1,504,000千円へと-2,669,000千円の修正ですから、土地建物価格の修正、すなわち、不動産鑑定評価のインパクトの大きさが分かります。

(2)DDS額の算定(表5)

実態バランスシートの作成をうけ、取引先金融機関の、借入金残高に対する担保資産による保全額と非保全残高が計算されます。 本件では、まず非保全残高全体をDDS対象債権ととらえ、借入金の性格の検討や各金融機関と調整の結果、DDS依頼見込額を算定しました。借入金残高総額4,500,000千円のうち2,500,000千円、約56%の借入金をDDSしようという計画です。

(3)事業DDによる損益計算書の変化(表6、表7)

事業DDの結果、再生支援後の予想損益計算書が作成されました。 売上は1%程度の増加にとどめ、仕入原価の削減と人件費・営業経費等の削減を計画し、営業利益を53,500千円から129,500千円と大幅に増加させる計画です。 再生支援前でも営業利益は出ていましたが、営業外費用(支払利息)が170,000千円あったため経常利益は76,500千円のマイナスでした。 しかし、DDSの実施により営業外費用が100,000千円に削減され、経常利益がプラス化する計画となっています。表7は営業外費用(支払利息)の内訳です。DDS化された劣後化債権の利率は通常債権の利率より低く設定されています。 さて、表6に表示されている営業利益は減価償却後の数字ですが、再生支援前においても償却前営業利益は253,500千円あり、キャッシュフロー的には営業外費用を賄えていることが分かります。金利負担が重いが本業では一定のキャッシュフローを生んでいる、とはこういうことです。このような状況であれば、収支の改善に取り組み、DDS等で金利負担を一定期間楽にしてあげれば、神山旅館は十分に立ち直ることができるわけです。

以上のように、事業再生スキームにおいて不動産鑑定評価は重要な役割を担っているわけです。 それにしても、売上2,000,000千円に対し借入金残高総額が4,500,000千円ですから、売上の2.5倍の借金ということです。本件は架空の数字にしてありますが、実際に取り組む案件や、再生計画にのらない破綻懸念以下の案件でも売り上げの2倍近くの借金がある旅館や企業はめずらしくありません。借主側にも責任はありますが、「貸すも親切、貸さぬも親切」という名言がある通り、貸す側の責任も問われているのだと思います。 ちなみに、日本の国債残高はGDPの約2.3倍(財務省発表:2013年)ですから、我が国もなかなかの借金をしているということですね。

事業再生と鑑定評価3(再生スキームについて)

再生スキームには、第三者割当増資(新株の発行)、DES、DDS、第二会社方式などがありますが、ここではDES、DDS、第二会社方式について説明します。

(1)DES

DESとは、デット・エクイティ・スワップ(Debt Equity Swap)の略で、負債(デット)を資本(エクイティ)に交換(スワップ)するということです。具体的には、時価で買い取った債権をファンド等が普通株などに転換し、企業の債務を圧縮することです。 例えば、金融機関が再生対象企業に10億円を貸し付けているのであれば、まずそれをファンド等が買い取ります(通常は10億円のままではなく、実態に合わせたディスカウント価格で買う。ディスカウント部分が債権放棄部分となる)。企業にとっては、借入金の相手が銀行からファンド等に代わり、その借入金についてDESを行うわけです。その結果、借入金はBS上、資本の部にスイッチされ資本が膨らみ、債務が圧縮された形となるわけです。 実態に合わせたディスカウント価格とは時価のことであり、この時価を算出するため不動産鑑定が実施されるわけです。

(2)DDS

DDSとはデット・デット・スワップ(Debt Debt Swap)のことで、負債を別の負債に入れ替えてしまうというものです。具体的には、既存の債権を、返済条件をより緩やかにした劣後債権に変えてしまう方法で、再生の現場ではよく使われる方法です。 このDDSを実行すれば、それまで負債として扱われていたものが資本とみなされ(金融検査のうえでは資本金とみなされる)るので、その債務者の債務者区分は「正常先」または「要注意先」にランクアップされます。 金融機関の側からみると、貸出債権のうち劣後債権の部分の資産価値は低いですが、通常の債権として残した部分は正常債権となるため貸倒引当金が軽減されるわけです。金融機関にとってはメリットがありますよね。地方銀行以下の中小金融機関は、一部の取引先に対しての債権放棄が知れると次から次に債権放棄を求められる可能性があるため、債権放棄には対して強い抵抗感があることもDDSが受け入れられる一因とも考えられます。 では、企業側にとってDDSを行うことにメリットはあるのでしょうか。借入金は借入金のままなので、いずれ返済になければならないことに変わらず、財務内容が改善しているわけではありません。つまり、状況は何も変わっておらず、問題を先延ばしにしているに過ぎないともいえます。DDSは中小企業再生における有力な方法ではありますが、それだけでは根本的な解決にはなっていないということです。また、金融機関主導で行われると、金融機関に有利な形で再生スキームが組まれるおそれがあるので、債権放棄を伴わないDDSにおいても第三者機関の調整・評価を経ることが望ましいと考えます。 このスキームの場合、私の経験では、鑑定評価を入れ、各債権者の担保保全額を確定し、保全されない部分についてDDSを行う、ということが多いようです。

(3)第二会社方式

第二会社方式は、事業譲渡や会社分割を利用する方法で、会社経営上の重荷となっている不採算事業や不良資産と化している不動産等を別会社に切り出し、儲かっている本業に集中することで企業に立ち直ってもらう方法です。 具体的には、事業や組織をGOOD事業とBAD事業に分け、GOOD事業を新たに設立した受皿会社(第二会社)に移転し、その第二会社に対しリファイナンスや再生ファンド等からの出資が行われます。一方、旧会社に残ったBAD事業は、清算手続きの透明性を確保するため特別清算等の法的整理により清算してしまうことが一般的です。第二会社が営業上の許認可を再取得する必要がある場合には、旧会社が保有していた事業に係る許認可を第二会社が承継できます。また、第二会社を設立した場合等の登記に係る登録免許税、第二会社に不動産を移転した場合に課される登録免許税及び不動産取得税が軽減されるといった措置もあります。 この方法の場合の鑑定評価は、GOOD事業を行うための資産(第二会社に移転される資産)と、旧会社に残る資産(処分され借入金の返済に充てられる)の両方について実施されます。(表3参照)

いずれの場合も鑑定評価における注意点は、実態より高い評価にならないよう注意することです。再生スキームの場合、鑑定評価額が債権者の債権放棄額やDDS額に直接インパクトがあるのですが、債権者の思惑が複雑に絡み合う場合、様々なルートから評価額に対する要請がくる場合があります。現状では、債権放棄を伴うときだけでなく、DDSを実施する場合も第三者機関の調整・評価を経るのが一般的となりつつあるので、そのようなことは少ないとは思いますが。最悪の場合、再生計画が頓挫するだけでなく、債権者に二次損失が発生する可能性もあるので要注意です。

事業再生と鑑定評価2(事業再生の流れ)

大まかな事業再生の流れを説明します。 表1は、神山興業の事業再生スケジュールです。 事業再生計画がスタートしてから再計画策定が終了するまで概ね半年程度を要します。 金融機関との調整が長引くと、それ以上かかる場合もあります。

再生計画策定に先がけて、財務DD(デューデリジェンス)と事業DDが実施されます。 不動産鑑定士は、この中で財務DDに関与します。

不動産鑑定士が再生スキームの流れの中でどのように関与しているか表したのが表2です。 案件打診は表1における再生計画がスタートする約1ヵ月程度前にあり、依頼者と評価内容の詳細について打ち合わせを行い、第一回目のアドバイザー会議が開催される時には概ねの評価スペックが決まっているよう調整します。 鑑定評価書のドラフト提示は、再生計画がスタートして1ヶ月~2ヵ月程度、それに基づいてDDSや債権放棄額の調整・決定が行われ、支援内容が決定し、鑑定評価書を納品することになります。

事業再生と鑑定評価1(概要)

事業再生とは、簡単に言うと、つぶれかかった企業を立ち直らせることです。 つぶれる、といのは、倒産や破綻することです。

「事業再生」高木新二郎著(岩波新書)の冒頭には次のように記載されています。 「事業を再生するためには、なによりも早期に対策を立てて実行に移すことが必要になる。事業再生を医療に例えるなら外科手術に似ている。病気が全身に拡がらないうちに患部を切除し、体力を回復させて活力を甦らせるように、不採算部門や不得意な部門を切り出して他に売却するか閉鎖する。その後、手術の結果を馴染ませ、体質を改善するための内科的治療を継続して健康体へと回復させるように、収益を改善できる見込みのあるコア部門に力を集中し、過剰債務(多すぎる借金)を減らすのはもとより、再投資を呼び込むなどによって体力の強化を図る。事業と財務の二つの側面での再構築(リストラクチャリング)を行うのだ。いうまでもなく事業再生の場合にも、早期治療のためには早期発見が必要である。」

いきなり否定するわけではありませんが、事業再生ってそんなに簡単に言い切れるものなのでしょうか? 現実的に中小企業においては、不採算部門の閉鎖や売却というのはなかなか難しい面もあるので個人的にはあまり賛成はできません。たとえ零細企業であろうと、企業はそれぞれ独自の企業文化と歴史を持っているので、ヘタな外科手術は企業の存続が危ぶまれる結果にもなりかねません。外科手術は最小限度にとどめ、あとは漢方的処方やリハビリをしながら自律的に回復していくことがよいのではないかと、個人的には考えます。ただし、時間的に許されればの話ですが…

ですので、事業再生は、企業または事業を立ち直らせる、というよりも、自分で立ち直ってもらうようサポートすることではないかなと思います。

では、なぜそこまで悪化してしまうのでしょうか。 理由はいろいろあるでしょう。 放漫経営、過当競争、需要の減退、過剰債務、連鎖倒産など。

いずれにしても、借金返済が滞っているということです。 それでもつぶれないのは、本業(あるいはどこかの事業)である程度のキャッシュフローを生んでいるからです。キャッシュフローを生んでいれば、一定期間借金負担を軽くし、その間にキャッシュフローを安定化させ健康体に回復することができるわけです。

事業再生にあたっての金融支援としては、債権放棄やDDS(デット・デット・スワップ)DES(デット・エクイティ・スワップ)等があります。財務デューデリジェンスにおいて実態バランスシート(BS)を作成し、担保保全額をみながら債権放棄等の額を決めます。対象企業が資産として不動産を多く所有している場合、時価に対し簿価が膨らんでいる場合が多いので、不動産を時価評価し直し、実態的な価値を反映したBSを作成するのです。 債権者(主に金融機関)は、特に債権放棄を伴う場合は自行の業績に関連してきます。また、スポンサーがいる場合は出資額にも影響を及ぼすので、時価評価が必要な、事業再生において不動産鑑定は重要な鍵を握っています。

共同抵当権

担保設定の方法でよく利用されているのが、共同抵当権です。

債権者が同一債権の担保として数個(複数)の不動産に設定する抵当権のことをいいます。共同抵当権は、複数の不動産が同一債権の担保となっているため担保価値の集積と危険分散を図る(不動産価値の下落時にも、複数の不動産により担保価値の毀損を最小限にとどめる)ことができます。

わが国の法制が、土地と建物を別個の不動産としていることもあり、多くの場合、共同抵当権が設定されています。共同抵当権が設定されると、個々の目的不動産の登記簿に、これと共同抵当関係に立つ他の不動産が存する旨が記載されるとともに、共同担保目録が作成されます。実務の現場では「共担(きょうたん)」と呼んでおり、対象不動産の確定や担保徴求漏れをチェックするときにも使います。

特に、先順位の共同抵当権が設定されている場合、その内容を共同担保目録でチェックすることは非常に有用です。

先順位の抵当権設定状況(どの土地や家屋に抵当権が設定されているか)が把握できれば、自行における抵当権設定の際に先順位のものと合致しているか否かのチェックができますし、場合によっては、先順位における担保徴求漏れ(例えば、接道部分の土地が未設定とか)を発見することもできます。抹消されている場合(下線が引かれている場合)でも、以前における抵当権設定状況を把握することが可能です。

こうすることによって、換価処分時の担保価値毀損のリスクを回避することができます。

所有者から入手する資料による調査

法務局調査や役所調査のほかに、所有者から入手する資料による調査があります。 それらの例としては、つぎのようなものがあります。

・オフィス、マンション等の賃貸物件の場合:賃貸借契約一覧表(レントロール)、建物賃貸借契約書

※レントロールはエクセル等の表計算ソフトで作成されていることが多く、電子ファイルで提供される場合もあります。それゆえ、改ざんが比較的容易であり、注意が必要な資料といえます。可能であれば、賃貸借契約書との照合、少なくとも対象不動産周辺の相場賃料との比較は必要でしょう。

・借地、底地の場合:土地賃貸借契約書、事業用定期借地権設定契約書

・土地区画整理地内の場合:仮換地証明書、仮換地指定図写し

・課税関係資料:固定資産税・都市計画税明細、評価証明

・その他:建築確認申請書写し、売買契約書、重要事項説明書

役所調査

役所調査については、市役所、町役場等の窓口に赴き、都市計画法や建築基準法等の公法規制や上下水道、埋蔵文化財などについての調査を行います。 役所調査での注意点は、当たり前のことですが、事前に調べた調査内容を必ず確認するということです。また、役所調査時に、事前調査では判明しなかった法規制等について影響が及ぶことが判明した場合は、その内容が記載されている資料の提示をお願いし、確認することが必要です。 役所では担当者の異動も多く、まったく異なる部署から異動してきたばかりの職員が担当となっている場合などは、法規制の内容についてまだ把握しきれていないこともあるので、お互いの勘違いや間違いを防ぐため、必ず確認することが必要です。 役所での主な調査部署(代表的なもの)には、主につぎのものがあります。

①都市計画課

役所の「都市計画課」や「まちづくり課」といった部署で都市計画法を調査します。また、インターネットで対象市町村の都市計画図が閲覧できたり、担当部署の窓口でも自由に閲覧できたりします。 都市計画図では、用途地域、容積率、建ぺい率、都市計画道路、高度規制等を調査確認しますが、担当部署で現在の内容に間違いないか、他に規制はないか、法規制が変更される予定はないか、などを確認します。

②道路管理課

道路管理課では、市町村道としての認定の有無、認定幅員、私道かどうかの確認などを行います。なお、国道の場合は国道工事事務所、都道府県道の場合は都道府県の出先機関でないと認定幅員等はわかりません。 これら出先機関は市役所などと離れた場所にあることが多いため、事前にどこにあるか調べておき、調査行程の段取りをしておくとよいでしょう。

③建築指導課

建築指導課では、建築基準法上の道路か否か、どの種別の道路に該当するか等を確認します。道路の種別としては、建築基準法42条1項1号、2項道路などがあります。 建築基準法上の道路に接しているか否かは建物の建築について大きな影響を及ぼしますので、役所調査のなかでも特に重要な調査といえます。

④その他

対象物件により、その他、つぎのような調査部署と内容が考えられます。

・開発指導課:開発指導要綱の内容調査や開発登録簿の閲覧

・教育委員会:埋蔵文化財包蔵地の該当の有無、試掘調査の要件等の調査

・環境保全課:土壌汚染対策法関連の調査

・資産税課:固定資産税路線価の閲覧や地番図の閲覧

・水道局:上水道、下水道埋設管の調査 ・ガス会社:都市ガスかプロパンガスかなどの調査

必要資料の収集(事前調査)

 不動産の調査にあたっては、現地に行く前に、対象不動産について、事前に入手可能な資料を用いて様々な角度から調査します。事前調査により対象不動産のイメージを掴むとともに、現地調査をスムーズに行うことができます。 また、現地に行ったときの実際の感覚と、事前にもっていたイメージとの違い、すなわち、現地でなければ感じ取れない情報がよりはっきりと認識できるようになります。 事前調査には、主につぎのものがあります。 (1)法務局調査 (2)役所調査 (3)所有者から入手する資料による調査

(1)法務局調査

法務局調査では、権利関係等の調査を行います。現在はインターネットで全部事項証明書や公図等を取得できるので、それで済む場合もありますが、実際に法務局に赴き、公図等を確認しながら調査する場合もあります。 法務局調査で収集する資料には、主につぎのものがあります。 ①不動産登記情報(全部事項証明書) ②地図情報(地図、または地図に準ずる図面) ③図面情報(土地所在図・地積測量図、建物図面/各階平面図、地役権図面) これらの資料はインターネットで取得が可能で、PDFにて閲覧・ダウンロードすることができます。ダウンロードした全部事項証明書は「ネット謄本」とも呼ばれており、費用も安く済みます。

①不動産登記情報(全部事項証明)

不動産登記情報(全部事項証明書)について、土地の表題部では「所在」「地番」「地目」「地積」を、建物の表題部では「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」「建築年月日」「付属建物」を確認することができます。 ここで、全部事項証明書に記載されている住所の表記は「住居表示」ではなく「地番」で表記されています。インターネット上の地図や市販の地図などは、一般的に「住居表示」で表記されていますので、「地番」と異なることに注意してください。住居表示未実施区域でも、地図上の「地番」と登記上の「地番」の位置が異なっていることがあるため、対象不動産の物理的位置の特定は慎重に行いましょう。 権利部(甲区)では、所有者を確認します。現在の所有者だけでなく、過去からの所有者の経緯(権利移転の状況)も確認できます。 権利部(乙区)では、抵当権、根抵当権、賃借権等の所有権以外の権利を確認することができます。 また、共同抵当権が設定されている場合、個々の目的不動産の登記に、これと共同抵当関係に立つ他の不動産が存在する旨が記職されるとともに、共同担保目録(以下、「共担」という)が作成されます。共担は、対象不動産の確定や担保徴求漏れをチェックするときにも使います。

②地図情報(地図、または地図に準ずる図面)

不動産登記法14条の図面(以下、「法14条地図」)では、対象地の位置、形状等が確認できます。公図は「地図に準ずる図面」として扱われており、法14条地図と比べて正確性に劣るため、概ねの確認ということになります。 法14条地図は、地籍調査の結果が反映されているので正確ですが、公図は地域によっては「公図錯綜地区」といい、現況とまったく異なる状況が記載されている場合もあります。

③図面情報(地積測量図、建物図面/各階平面図等)

地積測量図は、対象地の実測図であり、形状や面積の確認ができます。ただし、すべての地番に地積測量図があるわけではありません。また、稀に登記面積と異なっていることがあるので、地積測量図がある場合は、必ず登記面積との照合を行いましよう。 建物図面/各階平面図は、土地上の建物の配置、建物全体の形状、各階の形状が確認でき、未登記の増改築や未登記建物の確認にも使います。事前に入手した建物図面で対象建物の形状をしっかりと掴み、現地調査に臨みましよう。

 

担保調査の手順

 担保不動産の調査は、主につぎの手順で行います。

①対象不動産を確定する

②必要資料の収集と各種調査を行う

③価格水準を把握する

④現地調査に赴く

今回採りあげるのは、①対象不動産の確定についてです。担保調査の手順のなかでも特に重要であり、これを疎かにすると後々問題が生じる可能性がありますので、要点を押さえておく必要があります。

(1)不動産の所有権の確認

調査を始める前に、融資申込人に、まず、どの不動産(土地や建物)について担保提供意思があるのかということを確認する必要があります。そして、その不動産を本当に所有しているのかどうか、すなわち対象不動産の所有権を確認することが必要です。確認方法は「登記済証(権利証)」「登記情報」「課税明細書」などにより行います。  また、物上保証人がいる場合は、物上保証人本人の担保提供意思確認と所有権の確認が必要となります。物上保証人とは、他人の債務を保証するために、不動産などの自分の財産に抵当権等を設定した者のことをいいます。

(2)確認の際の注意点

担保提供の意思確認や所有権の確認をする際の注意点はつぎのとおりです。

① 建物に関する注意点

土地上に建物があると、その建物がどんなにボロボロであっても、その建物に権利が発生し、土地の価値が下がってしまう場合があります。したがって、対象の土地上に建物がある場合は、必ず土地と一緒に担保徴求をするようにします。なぜなら、後述するように、法定地上権などの問題が発生する可能性があるからです。 また、建物が登記されていない場合もあるので、担保設定をする際は、登記をしてもらう必要があります。

② 所有者などに意思確認をする際の注意点

融資申込人に「土地を持っている」と言われても、実は貸地になっていたり、借地であったりすることもあります。また、「建物はボロボロだから価値がない」と言われても、前述のようにその建物に権利が発生してしまうことがあります。 性悪説に立つわけではありませんが、人間は往々にして勘違いや記憶違いをしており、また、物事を勝手に決めつける傾向があります。したがって、必ず担当者自身で確認作業をし、一つひとつ裏づけを取っていくことが必要でしょう。これは、所有者を信用しないということではなく、事実関係をしっかり確認し、どの不動産に抵当権を設定するかということをお互いに確認し合い、後々の無用なトラブルを防ぐために必要なことです。そして、調査する自分たちについても、勝手な思い込みがないか、あるいはよく確認せずに「~だろう」とか「~に違いない」などと曖昧にしていることはないか、注意することが必要です。 このような作業は、相手の財産の状況を細かく聞き出すことにもなるので、お互いにあまり喜んでできるようなことではないのですが、後々、債務者区分が悪化し、さらに債務者との関係も悪化したりすると、担保不動産に関する資料の徴求等が困難になってしまいます。そのようなことにならないよう、当初の段階でしっかりと実行しておくことが大切です。